【ジャポニズム】葛飾北斎が海外に与えた影響:音楽家編

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クロード・モネ作『ラ・ジャポネーズ』

19世紀後半、西洋の芸術界を席巻した「ジャポニスム」という現象をご存知でしょうか。

これは、日本美術、特に浮世絵が西洋の画家や音楽家たちに与えた大きな影響を指します。

1867年のパリ万博に、幕府と薩摩・佐賀両藩が出展したことをきっかけに始まりました。

葛飾北斎や、歌川広重ら“歌川派”による浮世絵の表現は構図、色彩、平面性など、当時の画家たちに強烈なインスピレーションを与え、ゴッホやゴーギャン、モネなどの印象派の作風に多大な影響を与えました。

意外と知られていませんが、その影響は美術だけでなく音楽の世界にも大きな影響を与えています。

ほくさいぬ

今回は、葛飾北斎に影響を受けた音楽家を紹介します!

目次

ドビュッシー:交響詩《海》

Photograph of Claude Debussy This image is in the public domain.

ドビュッシーはフランスの作曲家。

代表作『海』や『夜想曲』などにみられる特徴的な作曲技法から、音楽界の「印象派(印象音楽主義)」と称されることもあります。

フランス・カンヌで少年時代を過ごし、「音楽家でなかったら船乗りになっていただろう」と語るほど、生涯に渡り愛する海をテーマに作り上げたドビュッシー。

代表作の交響詩「海」は、作曲家として円熟期の1905年に発表されました。

この交響詩は3曲で編成されています。

ほくさいぬ

ファイナルファンタジーやドラクエっぽい雰囲気でかっこいい!
特に1曲目は坂本龍一っぽさを、2・3曲目は昔のディズニーっぽさを感じました!

ドビュッシーと北斎の出会い

19世紀末にパリ万博が開催され、ドビュッシーだけでなく数々の芸術家に衝撃を与えたのが日本の文化。

ドビュッシーは日本の浮世絵から、西洋の伝統的な様式に則らずとも、芸術は成り立つのではないかと考えたのです。
さらには、「音楽の本質は形式にあるのではなく、色とリズムを持った時間なのである」と悟ります。

そうしてドビュッシーの音楽は、メロディーに頼ることなく、色とリズムで海を表現するという、これまでにない革新的な表現にたどり着いたのです。

ドビュッシーは北斎の浮世絵「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」を自分の書斎に飾り、さらには交響詩「海」の楽譜の表紙にも採用するほどの気に入りっぷりでした。
また日本美術をはじめとする東洋の品々のコレクションを多数収集。サロンの暖炉の上には仏像を置いたり、仕事机のまわりには竹製の矢立てや鍋島のインク壺、鯉の模様のたばこ入れといったこだわりのインテリアで部屋を飾っていました。

1910年に撮影されたクロード・ドビュッシーとイーゴリ・ストラヴィンスキー。背景に「神奈川沖浪裏」などの絵画が飾られている。

ラヴェル:《鏡》より〈洋上の小舟〉

French composer Maurice Ravel.(Wikipediaより)

詩や絵画から受けた印象を感覚的に表現する音楽家の代表的存在がドビュッシーとラヴェルでしたが、彼もドビュッシーと同様、自宅に浮世絵を飾るなど日本の美術への関心が高い作曲家でした。

ピアノ曲集《鏡》の〈洋上の小舟〉も、ドビュッシーの《海》と同じく、北斎による「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」に着想を得て作曲されましたが、決定的に違うのはラヴェルの「視点」だと思います。

ほくさいぬ

曲の雰囲気は、久石譲っぽさを感じました。

ドビュッシーと違うと思った点は、自然の情景を曲にしているだけでなく、その時代に生きた人々の目線や、ひいては社会的な目線も表現されているのです。

周囲や社会情勢に流されてしまう人々の悲しみと喜び、賢さと愚かさ。

それらは常に表裏一体であり、人間の本質でもあります。

しかしながらそれが美しさでもあり、だからこそ芸術として人々の心を惹きつけるのではないでしょうか。

ラヴェルと北斎の出会い

北斎は当時のフランス文化人の間で絶大な人気があり、浮世絵はもちろん、日本ではマイナーな北斎漫画ですらよく知られていました。

ポール・ソルドという画家が、ラヴェルに「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」を紹介したのが、ラヴェルと北斎が出会ったきっかけと言われています。

ほくさいぬ

ポール・ソルドについて調べてみたけど、現在ほとんど情報が残っていない画家みたい…

ちなみに、フランスのモンフォール・ラモリ―にあるラヴェルが晩年の16年を過ごした家が現在、「モーリス・ラヴェル博物館」という名のミュージアムとして保存されています。

そこに行くとラヴェルが生前にコレクションとして収集していた日本画や浮世絵も展示されているので、機会がある方はぜひ訪れてみてください。

まとめ

ドビュッシー、ラヴェルの両者とも、北斎の「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」に魅了された音楽家でしたが、

ドビュッシーは絵の中の「波」に注目し、形式化された西洋音楽様式に自然のありのままの美しさを取り入れました。

対してラヴェルは絵の中の「舟」に注目し、人間の視点を音楽に取り入れることによって観客の心に共鳴した音楽を作ることができたのではないかと思いました。

ほくさいぬ

葛飾北斎が表現した東洋の精神が、西洋音楽家に影響を与えたのはとても興味深い話でした!

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この記事を書いた人

化政文化研究家
某芸術大学 日本画専攻卒。日本人らしくありつつ、飾らないのに粋な江戸文化である『化政文化』に魅了され、その魅力を多くの人々に伝えたいと思ってブログを始めました。
普段はジャンルにこだわらず、インタビュー系の動画制作や、動画のテロップ入れなど、映像編集業務全般を担当しています。過去の動画制作数は1000本以上。

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